研究概要 |
研究分担者は奄美諸方言, 東北諸方言, 八丈島方言に関して, 現地調査を中心とした研究をすすめた結果, 以下のような成果に到達した. 奄美諸方言(とくに奄美大島北部方言, 南部方言, 喜界島方言)については, 動詞, 形容詞, 名詞, 代名詞の形態論的側面に関して, これまでの調査でのぬけおちやあやまりの補充・訂正ができた. これからはこれに資料からの適切な用例をいれる必要がある. また, いままであまりふれられてこなかった文法形式については, 奄美諸方言をつうじての展望をこころみることができた. 以上に関する成果の一部は, 松本「人称代名詞をめぐって-奄美喜界島方言-」「奄美諸方言の-danaの用法おぼえがき」として発表した. 東北方言の文法に関しては, 山形県の中南部で使用される指示接辞に関して, その意味用法, および分布と語形を調査した(ほとんど未発表). 方言資料にかかわる成果としては, 奄美喜界島に関して, じもと出身の斎藤兼雄氏と共同で, 斎藤・松本「喜界島方言のはなしことば資料」をまとめることができた. これは, 方言対話の録音からの文字化テキストに言語学的な注釈をくわえたものである. 一方, 金田「東北方言のむかしばなし資料」は, 東北方言のかたりくちをつたえているとみられる既刊のむかしばなし集が, 資料的にどのていど方言研究にもつかえるかを点検したものである. 方言集・方言辞典つくりの現地研究への協力では, 松本は, 斎藤氏に協力して『喜界島方言集』(仮題・未完)の草稿づくりをてつだい, 金田は, 高橋良雄『続及位の方言』(1987・12)の完成に協力した. その後も『正・続』から『及位方言辞典』をつくるための準備を共同作業でつづけている. 八丈島方言に関しては, 事前の調査不足もあって, 他の方言のものにみあう体系的な文法記述にいたらず, 資料性の点で質・量ともにそなわった録音資料の採集が課題としてのこされた.
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