研究概要 |
琉球方言は, 日本語方言の中でもその特色は際だっている. 特に, 音声は本土と異なるものが多く認められる. 本研究は, 琉球方言の音声の特色を精密な録音と精密なスペクトル分析で永久的に保存すること, そしてその音響的特性を解明することを行った. 経費の関係で, 全てをつくすことは無理であったが, 沖縄本土の首里方言, 宮古島平良市狩俣方言, 奄美大島方言, 徳之島方言の特色音声については, 当初より考えていたとおりの成果をあげることが出来た. 資料はテープ1時間もの約50巻分を得た. 分析法も, 共同者とパソコンで行うLPC分析, AbS分析を完成させた. 小型化したのはわが国で初めてであろう. それも駆使して, 鋭意分析に努めた. 研究成果の一部は, 日本音響学会, 日本方言研究会, 日本音声学会研究例会等で発表してきた. 特に, 琉球方言のウが本土のとは異なっていることを発見した. 第一ホルマント370Hz, 第二ホルマント790Hzとなる. 琉球全体に共通するであろう. 本土でのオとウを合成した時の音声である. 中舌化母音でイのそれは, 音響的なスペクトル分析結果に大きな違いはないが, 聞こえにおいて違う点もある. 今後の課題である. 同じく中舌化母音で奄美方言のエの場合, 第一ホルマント500Hz, 第二ホルマント1500Hzとなることが分かった. まさに母音の中性化であることも発見した. また, 奄美方言の母音変化・中本教授の仮説が, 徳之島山の場合, 年層別に母音分析して正しいことを証明した. 首里方言などのグロッタルストップもインテンシティーにて視察できた. 後日, スペクトル分析資料集を中本教授と刊行する予定. 刊行に手間取っている理由は, スペクトル分析結果とそれに付ける音声記号との照合を琉球方言研究の権威中本教授と綿密にしているからである.
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