研究概要 |
本研究は, バシリカ法典と並ぶビザンツ法の基本史料であり, ビザンツ法研究にとってのみならず, 古典期ローマ法研究に重要な資料を提供する『法学提要ギリシア語義解』について, 1.著者問題, , 2.成立過程の二点につき次のような結論に達した. 1.著者問題: 『義解』の著者については, エースティーニアーヌス帝法学提要共同編纂者のひとりソテオフィソウスとすることにつき, 本世紀初頭より疑問が出されこれが一般に受け入れられていたが, シェルテマおよびネルソンと共に, これを積極に解するべきと考える. 2.成立過程問題: 『義解』の成立を, コンスタンティノープルの法学校における533/4年の講義から生れ, 自ら書き下したものでないとの近時の見解はこれを是認すべきも, 遂語訳と解説は学生の手許で一体化されたとの有力な推測はなお検討すべきものを残している, と考える. しかし, 先行の文献, とりわけガーイウスの『法学提要』は, ラテン語原文を時に利用したことが推測されるが, そのギリシア語訳によりしかも全面的に頼ったとするフェツリーニの見解は採りえない. むしろ, ユ帝法源のどこにもない独立の資料をも参照していることに注目すべきである.
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