研究概要 |
1 日本法について 考察の対象を, 広告契約・広告自主規制の倫理と法理・営利広告業者の顧客に対する責任に三分した. (1)広告契約について 広告主・広告業者, 広告媒体者間の契約について, 法的性質, 成立, 広告料金, 契約の付隋的義務等, 実務上問題となる13の項目毎に検討し, 加えて, 裁判事例4件をえらび評釈を行った. (2)広告の自主規制について 広告は表現の自由を生命としているので, 広告の規制は関係業者の自主規制に期待するということが大であるが, 自主規制規範の意義と性格を明らかにし, かつ, その実効性がどのようにはかられているか調査した上, 自主規制規範の法律的作用を, 過失の評価との関係で論じ, 一部を英文で発表した. (3)広告業者等と顧客の関係 ここには問題が多い. 第一は, 広告主とその広告の受け手である顧客間の契約問題につき, 外務員による販売促進広告, 車内放送広告の例を中心に, 附随義務論を展開した. 第二に, 新聞社と顧客間の法律関係であるが, 情報としての品質に瑕疵があるとき, 新聞社は情報提供契約上, 瑕疵担保責任を負うのか, 情報の品質保証契約が存在するのか, などの問題をとりあげた. 第三に, 推奨者は広告主の顧客にいかなる法的責任を負うか, 二件の裁判例をとりあげ, 共同不法行為理論の有用性を強調した. 2外国法について ひろく広告に対する各国の規制の在り方を, アメリカ合衆国, EC加盟諸国について考察し, 規制上の特色を明らかにし, 日本法に示唆を与える諸点に言及した. 3今後の研究について これ迄, 伝統的法理論の立場から考究したが, 広告問題は, 未開拓の分野である情報と法の領域の1部でもあるから, 今後は情報法との関連で考究する考えである.
|