研究概要 |
1980年代後半, わが国は急速な円高, 国際収支の黒字の結果いわゆる構造調整が進むこととなった. それは, 製造業での高付加価値化と情報産業化ならびにサーヴィス経済化と称される第三次産業への移行となってあらわれている. この構造調整の根底にあってME化がどの産業においても大きな役割をはたしている. 本研究は, 1.構造調整の実態とその中でのME化の果たす機能を分析する. このため主要産業鉄鋼業, 自動車産業, 電気機器産業などについて比較検討を行い, その中での法的諸問題につき明らかにした. 2.この中での法的な問題の核心が, (1)急速な構造調整が鉄鋼業に代表される重厚長大型産業の雇用調整を電機ことにME関係の産業に新たな雇用形態であるパート労働や派遣労働といった労使関係をもたらしており, この法的取扱い, 枠組が問題となっていることにある. また, (2)産業間での雇用のミスマッチが配転・出向に新しい様相を与えていること, (3)情報産業化は技術開発やいわゆるノウハウにより一層の重要性を与えた. これが終身雇用制に代表されるわが国の労使関係の変化とともに, 引き抜き, 転職などの新たな法関係を生み, その結果, 企業と労働者の知的所有権保護がより重要な法的課題として登場したのである. (4)その結果, 労働現場においては新しいME関係のストレスや有害物, 安全の問題も生じていること. これらの論点を整理し, 既に発表されたいくつかの分献にその結果を発表した. 3.以上2で述べた諸問題はわが国だけの問題ではなく, 先進工業国に独特であり, 共通の問題となっている. その中で構造調整についての国際化は, 国際的水平分業, 国内の製造業の空洞化とその補完のための外国人労働者の導入などの問題として, 国際的なレベルでの法的諸問題を発生させている. このような問題は強くME化の進展, 技術革新の進展とも結びついて発生しており, 比較法的観点から西ドイツ, アメリカなど, 他の欧米諸国との関連で, 問題の解明を行った.
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