研究概要 |
本研究は溜池の管理と利用の権利にかんする研究を, 戦後の判決をつうじて溜池にかんする紛争の特色とこれにたいする判決の傾向を明らかにすること, いくつかの溜池の実態調査をつうじて溜池管理主体たる集団の性格と水利秩序を明らかにすること, の2つの面に分けて行なった. 1.戦後の判決については判例集等に公刊されているもの主としたが, それらの判決でも未公刊の審級のものはこれを収集し, 各判決につき紛争の内容を明らかにした. 集められた判決は14(14件の訴訟事件)であるが, このうち水利の権利を争うものは3件にすぎず11件は溜池地盤所有権の帰属を争うものであり, また現状が埋立てられて溜池でなくなっているものも3件ある. したがって紛争は, 溜池地盤所有者(市町村を含む)と個人(おおむね溜池利水集団構成員)との間のものが多い. (この判決の紹介, 分析は西南学院大学法学論集21巻1号に掲載予定である). 2.溜池の調査を行なったのは, いずれも溜池の多い地区で, 兵庫県三原町, 広島県尾道市, 香川県琴平町, 福岡県久山町, 大分県別府市ほか2,3の町村であったが, これらの地区の大きな溜池は一般に村落(部落)とよばれる溜池管理集団が地盤を所有し, その集団の管理下に農業利水が行なわれている. 地区によって多少の相違はあるが, 溜池管理集団は村落住民集団(農業共同体)と一致しており, その集団構成員が地区内水田所有者であると同時に耕作者である. しかし耕作者と水田所有者が同一でない場合に集団構成員の資格等に問題を生じている. (以上調査地中代表的事例については, 西南学院大学法学論集21巻2号に掲載の予定である. なお大分県別府市の事例については同法19巻2号に報告した).
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