1.システム変動一般については米国のJuanJ.Linzがスペインの経験を基礎にして開発した権威主義体制から民主主義体制への移行モデルを一つの参考とした。 2.社会主義国への適用についてはカナダのH.Gordon Skillingの利害集団論、西独のHelmut Wagnerの二重社会論、ポーランドのJadwiga Staniszkisのコーポラティズム論などを参考とした。Wagner氏は1985年10月に来日し、親しく意見を交換する機会を持った。 3.資料の蒐集はかなり進み、(1)ポーランドの体制側の資料しては党・政府機関紙・誌、党大会・党中央委員会総会議事録など、(2)反体制側の資料としては「連帯」労組その他の反体制グループの合法非合法資料(東京のポーランド資料センターへの出張調査は大きな成果を挙げた)、(3)亡命文献、(4)自由ヨーロッパ放送などの西側情報、などを大量に入手することができた。 4.分析作業は目下進行中であり、最終的な結果はその完了を待たなければならないが、現在の段階での新たな知見としては(1)ポーランドの選良補充制度に大きな変化が生じ、システム変動の兆候がみられること、(2)新たな体制は権威主義体制の多くの特徴を具有していること、(3)制度的圧力団体、とくに軍部の影響力増大、イデオロギーの拘束力の後退、「法治主義」など多元主義的傾向が目だっていること、などを挙げることができよう。成果はさしあたり(1)1980-81年の党内選挙によってノメンクラトゥラ制と呼ばれる社会主義国独特の選良補充制度にどのような変化が生じたかを分析した英文論文(近刊)、(2)『ポーランド現代史』(近刊)の二つに発表される予定であるが、いずれも中間的である。 5.ポーランドの選良補充制度をなお安定を見せていない。今後党、政府、各種大衆組織などの主要責任者の補充動向を新聞記事や官報などで把捉し、長期的に変化をフォローしなければならない。そのためにはコンピュータによるデータ処理が必要となろう。
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