研究概要 |
1987年12月, レーガン大統領はソ連のゴルバチョフ書記長をワシントンに招いてINF全廃条約に調印し, さらに任期満了前に戦略兵器の大幅削減についての条約を締結することに意欲を見せている. レーガンが共和党の中でも強固な反共主義者, 対ソ不信論者, 軍備拡張論者であったことを考えると, 彼のこのような「変身」は歴史の皮肉とも言える. この変身の原因は何かを検討することを, 本年の研究の第一の狙いとした. その原因は次のようにまとめることができる. (1)レーガン政権内における教条派の後退, (2)アメリカ政治に見られる中道主義の傾向, (3)レーガン自身のプラグマティズム, そしてSDI構想に見られる戦略攻撃兵器大幅削減の発想--などである. レーガン自身について言えば, 米ソの対話・合意を通じての国際政治の安定を望むプラグマティズムと戦略攻撃から戦略防禦に重点を移すことでアメリカの絶対的安全を取戻そうという回顧的理想主義とが結びついているのである. (日本国際問題研究所の研究会-12月23日-で報告) しかしレーガン政権は中米政策においては強硬姿勢を捨てず, 一種のまき返し政策をとっている. 彼の中米政策は彼の米ソ「デタント」政策とどのように関連しているのか. その検討を本年の研究の第二の目的とした. その結果, レーガンは大局的デタントと第三世界での知己的権力争いは別のものだという考え方--かつてソ連のブレジネフがとった見解--をしていることが判った. (国際法学会秋季大会-10月17日-で報告) アメリカの人口構成には大きな変化が見られる. 人口構成の変化の動向を探り, それがどのような政治的な意味をもつかを検討することが, 本年の研究の第三の課題であった. 政治動向への影響については, 両極分裂, 中道政治という二つのシナリオが描けるが, 後者のシナリオがより現実的である. (日本国際政治学会大会-5月-で報告)
|