1.調査 加工食品18社、衣料品4社12部門、家電・靴・磁器・薬(ビタミン剤)・洗剤・化粧品・乗用車等のメーカー20社のうち家電を除いた全てから粗マージン率体系の回答を得た。以下で用いる小売と卸の両粗マージン、メーカー自身の流通費(以上三者の和は社会的流通費である)、メーカー自身の流通費を除いたメーカーの粗マージンはいずれも小売実売価格を100とした数値である。1985・6年に文部省在外研究員として滞在した英国で報告者が行った調査結果とカンパニイ・ベイシスで比較を行う。 2.分析 (1)加工食品.大型店(スーパー)粗マージン率に有意な両国間の差は認められない。日本の社会的流通費は、一般小売店とスーパーの両チャネルにおいて、英国より大きい。(2)衣料品.一般小売店チャネルと百貨店チャネルにおいて、社会的流通費の両国の分布は重り合う部分が大きい。しかしスーパーチャネルでは、日本がほとんど分布が重ならずに、英国より大きい。この原因としては、日本の最近5ケ年の衣料品分野での多品種小量生産・販売の進展が、英国のスーパー業界における少品種大量生産・販売と比較して、指摘できる。(3)靴・磁器・化粧品・薬品・洗剤等 卸と小売の粗マージンの和については両国間に有意差が認められない(家電については留保。) 以上の分析結果は、OECDの1980年日英購買力平価試算の比較とよく合っている。すなわち、英国で£1で買えるものが、日本では加工食品£1.8、衣料品£1.3、靴£1.0である(ただし£1=$402.9…これは1980年から1984年の5年間の為替レートの平均である)。 報告者は小売実売価格の小売、卸、メーカーへの配分(allocation)を問題としたのであって、小売価格の高低を問題としていないが、流通へ配分されるマージンが大きくなると小売価格が上がるといえるかもしれないことを上の分析とO.E.C.D試算のつき合せは示している。
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