封建制の下で生れた自治村落が、現在もその自治的規制力を喪失することなく機能しているばあいと、弱体化してほとんどその機能を発揮しえなくなっているばあいについて、いかなる要因にもとづいてその差異が生ずるかをあきらかにしたいと考えて、つぎのような資料収集および実態調査をおこなった。 1さきに東ヨーロッパの農村調査においてえられたデータを、既存の外国語および邦語文献と対比して、歴史的ならびに現代的な意味を確定すべく、東欧と西欧の農村共同体に関する文献の収集をおこない、さきの調査結果に若干の考察を加へて「東ヨーロッパ農村の調査ノート」(北海道大学『径済学部研究』第36巻3号1986年12月)を発表した。 2日本の戦後農政の農村サイドの受容の仕方の相違点を本州母村と北海道移住村の両者について検討するため、新潟県蒲原地方と富山県砺波地方において実態調査をおこなった。とくに砺波市鷹栖地区、福光町坂本地区について大字資料を撮映収集し、目下その整理をおこなっている。 3北海道開拓村のばあい、当然のことながら、封建制下の産物である自治村落を欠如しているが、それに代る農政滲透の媒介者として、農業協同組合、集落生産組合、生産組織などが重要な役割を果している。この機能を解明するため、北海道南空知郡下の二集落について実態調査をおこなった。農業基本法農政の優等生といわれ、規模拡大を急速に達成してきた10〜15haの規模の水稲単作大規模経営が、農政対応への失敗から、膨大な負債の累積を招き、ついに破産整理、離農を余儀なくされるにいたる詳細なデータを、農協サイドと農家サイドの両方から収集しえたので、目下その整理と分析に従事している。発表は学会誌または「経済学研究」を予定している。
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