研究概要 |
補助金交付対象研究課題の成果は, 所定の研究報告書のほか, すでに発表済みの欧文ノート, 'Collective Employee Investment Funds and Economic Democracy'にまとめられている. 後者については, 1930年代に形成されて, その後1950・60年代におけるスウェーデン資本主義の福祉国家的統合のための特殊的な階級的対抗の枠組みをなした, いわゆる歴史的妥協体制がなにゆえに70年代初頭以降解体にむかったかという歴史的背景を吟味しつつ, Korpi, Stephens, Himmelstrandらの'cumulative growth of labour's power'及び'matured capitalism'等に示唆を受けながらLO・SAPの提起した労働者投資基金構想の歴史的意味の検討を試みたものである. 前者については, 先進資本主義国一般における労働運動と左翼勢力が1970年代半ば以降直面している共通の諸困難を端的に示すものとして英国労働運動の戦闘化・左傾化とその後の諸困難について, とくに70年代半ばに登場した労働党の急進的綱領なかんずく, 産業再国有化等を含むAES(代替的経済戦略)が挫折と死文化をよぎなくされる必然性について, ことにかかる急進的構想に内在する限界・基本的問題点をその理論的難点との関係で明らかにしようとしたものである. 具体的には, AES構想を擁護する論陣をはった主要な担い手の一つであるCSE(社会主義経済学者会議)グループの立論に即し, 彼らの資本主義についての原理的理解, 現代資本主義(社会主義)についての基本的理解にかかわって, それらの特徴づけを試みた.
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