研究概要 |
中国の対外開放政策の日中経済関係に及ぼす影響を主題に中国対外経済貿易部国際貿易研究所日本研究室副主任の馬成三氏を講師に迎えて5回にわたる研究集会を開いた. 当研究集会には, 慶應義塾大学産業研究所のスタッフも多数参加し, 日中貿易の拡大均衡への移行の可能性, 中国の外貨導入の成果と課題等が討議された. このような討議結果をふまえた研究成果をKeio Economic Observatory Occasional Paper NO4, 馬成三「中国の改革・対外開放政策と中日経済関係」として刊行した. 前年度にひきつづき中国経済についての基礎的文献及び統計資料の収集整理作業を行い前年度に刊行した文献目録を更に拡充する作業を行った. 次に中国工業製品貿易拡大の可能性を考える際の基本モデルの構築を行った. その概要は以下の通りである. 中国のように広い国土と多様な天然資源に恵まれた国が経済発展をとげる場合, 農産物や天然資源については, ほぼ自給可能と考えてよい. 従って経済開発を進めるにあたっての輸入の役割は経済建設の過程で生じるさまざまな工業製品の国内需給ギャップを補填し, 国内供給が困難な高度技術を体化した資本財を調達することである. 中国の場合, 1982年から1986年迄の輸入財購入にあてられた外貨の実に94%が輸出によって稼得されたものである. また中国政策当局の貿易収支, 経常収支バランス保持の考え方はきわめて強い輸出拡大に当っては第一次産品輸出からの脱皮と製品輸出の高度化が課題となる. この際には国内生産システムの相互関連を把握することが大切となる. 従って基本モデルでは生産構造アプローチが必要となる. 生産構造アプローチでは各産業が個別ではなく中間取引を通じて関連しあい輸出製品拡大にあたっての部品供給がいかに円滑に行われているかを明示的に示す.
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