研究概要 |
本研究は, 税制の資本蓄積に及す影響という問題に, 資本所得課税の実態の解明を通じて迫ることを目的としている. 研究成果は, 添付の報告書の構成に明らかなように, 3つの論文によって要約することができる. 以下, 各論文の概要を記す. まず第1論文は, 戦後日本の設備投資に関わる諸政策を, 制度および計量の両面から, やや包括的に検討した. 本研究の概要的論文というべきものである. まず, 投資の業種別動向が, 実に時代とともに伸縮的に変化することが示される. 次に, それを支えたと称される諸政策は, 計量的な見地から判断する限り, とくに特定産業に肩入れしていたというわけではないことが, 明らかにされる. 第2論文は, 資金調達コストの面から税制の役割を検討した. ここでも, 資本コストに及す効果は, 加速償却, 引当金, 準備金によるものは少なく, むしろインフレ, 企業の備入れ依存度を通じるものが, はるかに大きいことが示される. 第3論文は, 日米比較の観点より, 製造業の平均的法人税負担を計測した. ここでも, インフレ, 企業金融の差が, 償却制度の相違等を通じて両国の格差を増大していることが, 示される. 本研究を通じて, 新たな問題の研究の必要性を痛感した. なかでも, (i)家計の貯蓄, 資産選択と税制の関係, (ii)土地, 株式等の資産価格と税制の関係および(iii)国際資本移動に及す税制の効果については, 今ほど本格的研究が必要とされる時は, ないであろう. 本研究は, こうした重要な諸問題を考えていく上の基礎作業とみなすことができる.
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