研究概要 |
実際の企業に対して, 臨時的に処理能力を増加するというコントロールがどのようなルールで行われているかを調査した. その結果, 1.いずれの企業も, 需要変動を臨時的な処理能力の増加によって吸収している. その中心的な手段は残業であるが, サービス業では外注も大きなウエイトを占めている. 2.しかし, いつ・どのくらい処理能力を増加するかというルールについては必ずしも明確化されていない. 3.そのため, 遊休や残業などの変動が生じ, 稼動効率は必ずしも高くない. 4.しかし筆者が予想していたようなルールで行っている工場にも遭遇した. この工場では実際に指標となる受注残の値を明確に決めてある. 一方, 理論的な研究では次のようなことを明らかにした. 1.客が, 待ち時間が長いからという理由で逃げるということのないシステムでは, (1)同一負荷率のもとで臨時的な処理能力増加量が等しければ, 処理能力を増加するタイミングと能力増加率の組合せ型とは無関係に, 遊休時間分布は等しくなる. (2)同一負荷率のもとで臨時的生産能力増加がある一定値になるようなコントロールをする場合, きめ細かくコントロールする方法も逆に粗くコントロールする方法もいずれも得策ではない. 両者の中間に最も効果的なコントロールが存在する. そして (3)臨時的に処理能力増加を行ったらその能力増加ぶんの遊休時間が発生する. 2.客が, 待ち時間が長いからという理由で逃げることがあるシステムでは, 臨時的に処理能力の増加を行うことにより, 客が逃げるのをどの程度防げるかを算出できる数値計算法を開発した. 以上の結果をふまえて, 臨時的生産能力増加を効果的に行うためのシステムの設計手順を明らかにした. そして筆者が提唱し始めた「受注残管理論」の体系をほぼ確立することができた.
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