研究概要 |
わが国の複合輸送業界は, 関連産業資本による一時期の過熱化した市場参入はおさまっているけれども, NVOCCの乱立ですでに過当競争状態にある. いまのところ, 若干の例外を除いて, わが国の国際複合輸送事業が成功しているとは必ずしもいえない. わが国の同盟船社と, 陸運・倉庫・港運・海貨を基盤業種とするNVOCCが提供する複合輸送サービスは, 欧米大陸における内陸輸送システムの開発と整備が十分でないために, 複合一貫輸送のメリットが十分に発現されていない, と不満を表明する荷主が多い. 特に経営規模が小さく, 財政基盤が脆弱であり, さらに優秀な人材に不足している中小のNVOCCについて, このことが強調されている. 一方, 過当競争により複合一貫輸送運賃ならびに付帯料金等が著しく低い水準に押し下げられているので, 複合輸送事業の収益性はきわめて乏しい. どうにか利益をあげているのは大手の数社のみで, 他の中小企業は複合輸送業務それ自体からはほとんど採算を得ていない. しかも, 近い将来この収益事情が改善するだろうと期待できる証拠はほとんどない. しかし, だからといって, 今後中小NVO企業等の複合輸送市場からの撤退が容易に進むとは思われない. なぜなら, 彼らのうちには, 在来基盤業務の維持ないし拡大を狙って複合輸送市場に進出したところが多く, そのために複合輸送業務それ自体の不採算をそれほど重大視しておらず, 企業の経営業種全体の総合実績でこれを評価しているからである. しかしながら, 多すぎる複合運送人の存在による過当競争と, それゆえの収益性に対する疑問, 効率的経済的な国際複合一貫輸送システムの編成能力, それに信用力, 等に見る企業間格差などにより, そのペースはともかく市場における供給企業の自然淘汰は着実に進むだろうというのが, 荷主業界の間でまた複合輸送業界の内部でも開かれた共通の見方である.
|