研究概要 |
本研究は明治期以後のわが国綿紡績企業の行った合併が, その企業成長にどのような影響を与えたのかを歴史的実証的に解明することを目的とする. 当初研究対象は明治期以後の鐘紡, 倉敷紡績, 敷島紡績, 大和紡績, 東洋紡績, 日清紡績, 富士紡績とユニチカの8企業であった. しかし研究期間, 経費や資料の制約により, 研究の中心を明治期の鐘紡の行った合併に移さざるを得なくなった. しかし明治期は企業の発展期であり, 鐘紡は上記8企業中でも明治期の合併事例が多い. これからみても研究目的の解明を進めていく上で有意義と思われる. 資料については上記8企業ともほぼ社史や営業報告書の存在が確認された. 被合併企業については若干の営業報告書の所在しか判明できなかった. 一方合併に関する資料としては, 8企業や被合併企業とも少ないようである. なお, 明治期発行の, 地元新聞に被合併企業とも少ないようである. なお, 明治期発行の, 地元新聞に被合併企業の経営や合併に関する記事が多く見出せたが, この調査収集には多大の経費と時間が必要であった. 上記以上にこれまでに判明した主要な点は, 1.鐘紡の被合併企業自身の行った合併も数多くある. 2.鐘紡だけでなく被合併企業についても, 実現しなかった合併事例が見られる. 3.合併理由としては企業基礎の確立, 当面の経営目的達成, 競争排除や同一資本系列などがある. 4.被合併の理由としては, 経営悪化, 役員間の反目, 役員の経営責任の欠如, 等である. これまでの研究成果は別添の報告書にまとめてある. 同書では, 明治30年代前半の鐘紡の行った合併が, 同社の大規模化を進めていく上で重要なものであったことを実証的に分析している. 今後は本研究を基礎とし, 同時期の他産業とくに銀行の合併との比較研究を行うことにより, 明治期の企業成長, 企業経営活動の実体の解明を進めていくことができよう.
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