現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。 この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。 以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。
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