研究概要 |
以下、Mにより、完備,単連結,微分可能なリーマン多様体を表わすこととする。Mの任意の測地線に対し、Mの任意の点から、垂線が、ただ1本しか、下ろせないとき,Mは焦点のない多様体であるという。焦点を持たない多様体は、負曲率空間を自然に拡張したものであるということが知られている、一方、焦点を持たない多様体は、ある点における、すべての方向の断面曲率が正になることもあるということが知られている。そこで、焦点を持たない多様体Mが、もしも等質的ならば、Mの断面曲率は至る所で、非正であろうと予想される。焦点を持たない等質空間の例として、非コンパクト型のランク1の対称空間がある。このことから、焦点を持たない多様体が、どのような条件の下で、非コンパクト型、ランク1の対称空間になるのか調べれば、前述の予想に肯定的な答の1つが得られることになる。 焦点を持たない多様体Mの等長変換全体から構成される群をI(M)で表わす。Mのどんな測地線αに対しても、I(M)の中に列{【4_n】}が、n→∞のとき、【4_n】(p)→α(∞)かつ【4(^-1_n)】(p)→α(-∞)となるようにとれるならば、I(M)は双対条件をみたすということにする,ここで、PはMの任意の点でよい。このとき、I(M)が双対条件をみたすことと、Mが非コンパクト,ランク1の対称空間と同値であることが示される。したがって,前述の予想は、I(M)が双対条件をみたしている時,正しいことがわかった。 そのほか、シャウダー基底をもつ複素バナッハ空間において、レビ問題に関する結果などが得られた。
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