研究概要 |
ガウス過程の標準表現の理論を多次元パラメータの場合に拡張することが, 私の研究目標である. このような拡張において, パラメータ空間上の全順序構造に依存することができないという点に大きな困難がある. 順序の代わりに, ヒルベルトの第4問題として提案された幾何構造(K^η, d)を我々は用いたい. レヴィが導入したn次元パラメータのブラウン運動を含む基本的なガウス確率場のクラスとして, 広義レヴィのブラウン運動と呼ぶ次のようなB(x), xεR^n, を考える:Bを任意の直線に制限すると, 常に独立増分をもつ過程になる. このとき増分B(x)-B(y)の分散d(x, y)はちょうどヒルベルトの第4問題で議論される所の射影距離となり, 一般化されたクロフトンの公式を適用して, L′-埋め込み可能距離としての式d(x, y)=m(V_xθV_y)を得る. ここで, Hは半空間h全体の集合, V_x={hεH;xεh}, mはH上の測度である. これから(H, m)に基づくガウス型彷徨測度をWとして, 望みの表現, B(x)=W(V_x)を得る. そして一般的な表現の枠組を提案する. つまり, 機関数F(x, h)を導入して, X(x)=∫V_xF(x, h)dW(h)を作る. 種々の場面で出会う重要なガウス確率場はこの形で表現されるものと期待される. このような表現をもつXの研究は, 表現に付随する積分交換の解析的研究と共に, いくつかの観点から行なうことができる. 例えば, 回転のような交換の下での不変性, 重要な非決定性, 双対ラドン交換のヌル空間, 鏡映正値性など. 加えて, 有限次元のパラメータxεR^ηからヒルベルト空間l^2へさらに拡張することもできる. 我々の表現の無限次元版は, 有限次元の場合に示される非決定性とは逆に, 決定的である. この事は, レヴィによって, 彼が導入したブラウン運動に対して発見された事実であり, 我々はこの興味深い問題に新しいアプローチを確立したことになる.
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