研究概要 |
生物生長過程をモデル化し、生成システムとしてその数理を明らかにすることは、理論的に特に現代応用数学の立場から非常に興味あることである。 生物は細胞分裂によって生長するが、その生成規則の最も簡単な場合は、言語理論における1次元グラマである。しかしながら生物系の場合は従来のグラマと異なって、その生成が同時的であり、しかもその配列状況は、1次元アレイでも2次元アレイでも3次元アレイでもない。一般にあるグラフで示される関係である。本研究は、このような見地からよく知られているLシステムの理論と2次元アレイグラマの手法を用いて新しいグラマの体係を提案し、その数学的意義を与え、この分野での基礎理論を確立した。すなわち、次に示されるような論文を国内外に公表した。 1.Direction-independent application of productions on two-dimensional arrays.2次元アレイに文法を適用する場合、方向を無視して得られる結果と従来の結果との比較を論じた。 2.Direction-independent grammars with contexts.上記の1のcontextsを持つ場合への拡張である。 3.Detection of interlocking components in three-dimensional digital pictures.3次元アレイの中で、クサリ状に連結された成分の認織の問題を論じたものである。 4.Graph grammars with path controlled embedding.パスによって制御されたグラフグラマと2次元図形の関係を論じたものである。 上記論文は、当初予定した研究計画にそって得られた新しい知見である。論文1,2の3次元への拡張,論文4の細胞分裂システムとの関係が、今後の研究課題となり、その解決がこの分野のみのり多いテーマとして展開される。
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