研究概要 |
1.星生成を伴う巨大ガス雲のモデルとして, エネルギーの発生と散逸のある自己重力ガス球を考え, 平行状態の安定性や非線型運動を調べた. 系は星生成率のガス密度依存性を表すパラメータの非常に狭い範囲でしか安定に存在しえず, 不安定になりやすい. ガスの粘性を考慮すると過安定な系は振動の成長が飽和し, 極限周期振動に落ち着く. 星生成によるエネルギー発生の遅れを考慮すると, 系の振動の性質は遅れの長さに敏感に依存し, その増加とともに極限周期振動を不安定にし, 系をカオス的振動に導く. 2.星生成によるガス雲の圧縮によって発生する衝撃波の進化を調べた. 圧縮されたガス雲の表面から発生した衝撃波は, 高密度ガスの球殻を形成し, 成長しながら中心に向かって伝播する. 球殻は, ガス雲全体が収縮する前に重力的に不安定になり分裂する. これはアソシェーションの形成機構として有効である. 星間雲中では衝撃波は様々な擾乱を受けるが, その効果を2次元流体シミュレーションで調べた. 衝撃波全面が歪むと, その谷の部分にガスが集まり更に高密度のガス塊が形成される. これは, 一時的な現象でるあが, ガス雲中の不均一の形成や星の形成の引金として重要である. 3.星生成を伴う巨大ガス雲の例 (1)矮小銀河の特異な性質は, その進化の初期に星の生成に伴って大量のガス放出したとすると自然に理解出来ることがわかった. ガスが主として中心部から放出されると, 質量の中心集中が減少し, 観測される構造が再現される. (2)銀河初期の進化のモデルとして, 収縮する巨大ガス雲を考え, 収縮の過程で星が形成されるモデルを調べた. 観測される球状星団の分布や重元素量を説明するためには, 星の生成に伴うガスの移動が本質的に重要であることがわかった. M31の球状星団の分布や重元素量から, M31のハローも我々の銀河系と似た進化を経たものと考えられる.
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