研究概要 |
SiC系の塵のスペクトルとあわせて, われわれの銀河で普遍的に星周で〜10μmブロードバンドスペクトルが観測されている. そうした場所で, 電波観測からSiO分子の存在が知られている. Si-Cの分子やラジカルの存在は実験的に検証することが困難であり, SiO系の物質とCを含む分子やラジカルとの反応からSi-C系の塵が生成されるとの立場から, Si-C系の微粒子生成を試みた. この研究の第一段階として, SiO分子ガス流の製造条件の確立およびそのガスからの急冷固体の生成条件の確定とそれらの構造解明が必要である. 61年度の研究において, Si-C系微粒子の前駆物質として, SiO分子の定常流の製造条件を確定する実験を行った. SiOガスをSiO_2+Siの当量混合物を真空中でタンタルボートヒータで加熱(1〜1,300°C)することにより得た. ガス分析は, 四重極型質量分析計の分析管を真空中へ挿入して行った. 62年度の研究において, はじめにSiO急冷固体の生成条件を確定し, その構造を調べた. SiO急冷固体は不完全結合の電子を持つ物質であることを電子スピン共鳴から明らかにし, SiO_2系の結合をもつケイ酸塩鉱物などと異なる物質であることをX線回折から明らかにした. SiO急冷固体は基本的に2群に分類できた. すなわち, 1.密度の低いところで急冷固化したもの(Molecule Frost)2.ガス密度の高い所で急冷固化したもの(Clvster Frost). Clvster Frostには, 低温基板上で析出したもの(Clvster Frost(1)), およびガス密度が極度に高く基板温度が高い場所で析出したもの(Clvster Frost(2))がある. これらの9〜10μm領域の質量減光係数を測定すると, 活性なMolecule FrostとCluster Frostは大きな値を示した. これらは〜400°Cに加熱すると構造が変化しはじめる. H_2Oの共存下では〜200°Cで変化する. 本研究によりSi-C系微粒子の前駆物質として反応性にとむSiO急冷固体を合成できた.
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