研究概要 |
従来、天体におけるヘリウム・フラッシュは3α反応によって起ると考えられてきたが、我我は密度が十分高い縮退ヘリウム領域においては、【_(14)N】【(e^_,γ)^(14)】C【(α,γ)^(18)】O 反応(以下NCO反応という)が3α反応より優勢になり得ることを提唱してきた。その顯著な事例として、先づ降着白色矮星のヘリウム・フラッシュを研究した。 初めの質量が0.3【M_(○!・)】である白色矮星が近接連星系をなす相手の星から、年間【10^(-8)】【M_(○!・)】〜3×【10^(-10)】【M_(○!・)】の物質降着を受ける場合を調べた。【10^(-8)】【M_(○!・)】【yr^(-1)】の場合には【^(14)Ν】【(e^-,γ)^(14)】C反応の直後に【^(14)C】【(α,γ)^(18)】O反応が起り、その結果怱ち温度が急上昇し遂には3α反応に点火してフラッシュ現象に到る。その時の密度は約【10^6】【gcm^(-3)】であり、NCO反応を考えない場合の10分に1の密度で早くもフラッシュに到る。【10^(-9)】【M_(○!・)】【yr^(-1)】以下の小さい降着率の場合には【^(14)Ν】から転化した【^(14)C】がまだ低温のため直ぐにはαを捕獲できず、【^(14)N】が全部【^(14)C】に転換したまま温度密度の上昇を続ける。しばらくして【^(14)C】【(α,γ)^(18)】O反応に到り、ヘリウム・フラッシュ へと発展する。この場合でさえフラッシュの起る密度はNCO反応を考えない場合の数分の一で済み、NCO反応がヘリウム・フラッシュを著しく容易にひき起し得ることを示している。 このように、比較的低い密度でフラッシュが起ると、星の内部での爆燃波や爆轟波の発生に影響してくる。また、このように早い段階でフラッシュが起ると合成される元素は鉄属ではなくSiやCaなどの中間の質量をもつ元素となる。これは【I】型超新星のスペクトルに見られる元素とよく一致する。 次に、この反応を赤色巨星の縮退ヘリウム核に適用してみた。巨星の進化につれて、その中心部が高密度低温の領域を通る場合には、やはりNCO反応が重要な役割を果すことが示された。
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