研究概要 |
山形大学理学部屋上(630【m^2】)の排水孔(8ヶ所)に直径20m/mの円形マグネット2000個を置き、61年11月以来、積雪中の鉄質球粒の大量採取を行っている。 この間、60年春の予備実験で採取した鉄質球粒20サンプルの成分分析を分析電子顕微鏡で行った。 球粒の大きさは直径150ミクロンから250ミクロンの間に分布している。 分析の結果、鉄,クロム,マンガン,アルミニウム,カルシウム,珪素,チタン等の存在が判明した。 特に、クロム,マンガンは、各々15個の球粒に含まれており、鉄に対する平均存在量は、重量比で、1.28%,1.14%であり、石質隕石の平均値1.28%,1.07%に極めて近い値を示している。 アルミニウム,チタンについては統計が少なく何ともいえない。 又、カルシウム,珪素等の非金属物質は石質隕石の値より低い。 この事から、鉄質球粒が石質隕石に近い物質の大気突入の際の熱変成によって分離生成された可能性を示している。 今回の測定ではニッケルの存在を明確に出来なかった。 これは分析電子顕微鏡から銅の妨害ピークが発生していてニッケルのピークを隠しているためである。 現在、妨害ピークの除去に努めている。 又、鉄質球粒の形態観察(走査像分析)から、ほとんどの球粒が中空状又は多孔質であり、大気中での固化時において、内部の溶融物質が固化収縮の圧力によって噴出した形跡がみられた。 この事から、低融点物質はより小さな球粒となっている可能性がある。 大量採取の結果を待ってから解明を急ぎたい。 分析技術,試料作製方法が確立出来たので、今後、統計をあげていきたい。低バックグラウンド測定系は、K-40ピーク値(1.4MeV)でのバックグラウンドを0.18cpmまで下げる事が出来たが、本測定では更に10分の1まで下げる必要があり、整備を進めている。
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