研究概要 |
1. バリオン構造と核力について-(1)SU(3)×SU(3)Skyrme模型に対し, 集団座標法を用いてSU(3)フレーバー対称性の破れを厳密に取り扱う方法が発展させられ, 特にこの方法がバリオン多重項の質量差を説明する上で効果的であることが示された. (2)カイラルバッグ模型については, パイオンのみの系に対して整備された枠組みが, 系を一般化したときにどの様に働くか興味ある問題であり, この問題に対して, ω中間子を導入してバッグ内部の真空の変化を調べた. (3)核力については, カイラルバッグ模型を用いて研究した. この模型では, パイオンの非摂動的効果とクォークに対する閉じ込めの効果が重要である. 最初の試みとして, 三次元中の一次元的構造である, 二つの層状クォーク物質間の相互作用を正確に取り扱ったが, 現在は, この枠組みを拡張し, 現実的な状況のバリオンーバリオン相互作用を研究しようとしている. 2. 高密度核物質での諸相について-(1)クォーク物質に関しては, tやb等の重いクォークまで考慮して状態方程式を調べたが, QCDの漸近的自由性のためにクォーク星は重力的崩壊に対して不安定になることがわかった. (2)π凝縮に関しては, 有限温度の対称核物質での中性π凝縮とゼロ温度の中性子物質での中性π-荷電π共存凝縮の研究が進んだ. 前者については, 有効相互作用を用いて, Δ(1232)の自由度を取り入れた枠組みで, Hartree-Fock計算がなされて高いエネルギー重イオン衝突の現象との関連が議論された. 後者については, カイラル対称性を基礎に現実的な効果を取り入れる枠組みで研究され, π凝縮中性子星の内部状態や冷却の問題が議論された. 更に, π凝縮中性子星とグリッチ現象との関連が議論され, 新たな機構が提案された. (3)その他, K凝縮の問題が新たな課題として研究され, 中性子星の冷却との関連が議論された.
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