研究概要 |
本研究は2年間にわたって, (a)重力相互作用を含むすべての基本的相互作用を統一する理論として, 超ひも理論がその資格を持ち得るかどうかに関して, 基本的な研究を行うこと, (b)また, ひも理論がどのような曲った時空解をもつかを解明し, 予想される宇宙初期問題の検討をする目的で出発した. 61年度には, (1)ひも理論がなぜ統一理論として特別に重要であるかを確認する目的で, ひもに限らず膜模型なども含めて, それらの基本的性質の比較を行った. 各模型が質量ゼロの粒子を生み出すかどうかは, 統一理論としての成否をきめるが, 我々はこの判定法を開発し, その結果膜模型は質量ゼロの粒子を生成し得ないことを示した. この方法は多くの人によって他の模型の研究に応用され始めた. (2)また, ひもの計算手段の改良を目的として, 経路積分を1ループ振巾に適用し, この方法の有効性を確かめた. 62年度には, (3)時空計量によらないひも場の理論(A6B7^3理論)の運動方程式を解いて, この理論がシグマ模型から予想される共形不変は背景場をすべて解としてもつことを証明した. (4)この結果, A6B7^3理論は時空計量に無関係なひも場の理論としての資格を持ち, 宇宙初期の解明に役立つ基本的な理論であることが示された. (5)超ひも理論に関しては, 径路積分法を用いてタイプI模型にあらわれるゲージ異常項の計算を行い, それらがどのような機構で相殺するかを解明し, SupermoduliとConformal Killing Spinsrが重要な役割をはたしていることを示した. なお, これらの研究過程において, (6)共形不変な2次元場の理論を次元法によって正則化をする際に, 今迄困難と考えられていた反対称テンソルをし, 曲率がある場合にも, n次元に拡張可能であることなど, 計算技術の開発においてもいくつかの成果を得た.
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