研究概要 |
ゲージ場の量子論に関する基礎的な面では, 速度位相空間および位相空間におけるゲージ変換の生成演算子を求める一般的な定式化が木村によってなされた. 弦理論への応用を目的に, 久保はPoincare上半面での経路積分を厳密に実行することに成功し, 従来のものを特別な場合として含む一般的処方を確立した. 本研究の中心課題である量子異常項に関しては多くの成果を得た. 藤川はGaussの演算G^a(x)が, (αG^a(x))/(αt)=chiral anomaly, という関係式を導き, 量子異常を含む理論の量子化の特質を明確にした. 同時に, 重力を含む場の理論の経路積分による定式化をより一層簡単に, 厳密に遂行した. これを適用して, 弦理論等に現われる演算子代数のなかのC数項が量子異常項から導かれることを示し, 弦理論におけるBRS対称性が一般の共形ゲージを用い26次元以下の時空においても保たれることを示した. 更に藤川は, 弦理論をその極限に持つように膜の量子論を展開した. いわゆるWess-Zumino項に弱い相互作用場Wμを導入する時の一般的な難点の解決法も藤川によって示された. このように弦理論と異常項との間の関係が経路積分による量子化法によって明白になった. トーションを含んだ重力とゲージ場が共存する時, 高次元時空での量子異常項が, 位相幾何学的方法および経路積分法によって求められ, 両方法間の関係づけが木村によってなされ, 6次元時空で共変的重力異常項が消去されないことも示された. 場の理論の応用として, 木村はNewton近似より2次高い近似での多体系の重力ポテンシアルを求め, その加速度依存性と重力場のゲージとの関係を示した. この近似での多体系の慣性中心も求められた. 藤川は原子核の回転運動をHiggs機構として捉えることが可能であることを示した.
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