研究概要 |
本研究は, 超対称大統一理論及び超対称弦模型の両理論の多様な可能性の追求を通してその接点を求めることにより, 大統一理論がこれまで未解決に残してきた根源的諸問題を解明していくことを目的として進められた. 大統一理論における多様性の追求としては具体的には, 前から研究を進めてきていた湯川相互作用をゲージ相互作用からダイナミカルに生成する可能性及びヒッグス場をシュード・ゴールドストーン粒子として実現する可能性について, それを現実的模型として実現を試みるときに生じる問題点について検討した. 前者において核子の安定性の要請は模型に強い制約を与えること, 又後者においてそのシナリオは輻射補正に対して安定なことが明らかとなった. 本研究において実質的に一番精力をかたむけたのは, 弦理論の理論構造の多様な可能性の解明においてである. 特に非可換オービフォルド上の弦理論は純理論的にも興味深く, 又現象論的観点からも期待のもたれているものであり, その理論構造の解明が望まれている. 従ってまず, 非可換オービフォルド上の弦の理論の量子論としてコンシステントな定式化を与えることからとり組んだ. 次にこれを基礎として, 弦理論の最終的無矛盾性に重要な役割をはたすモジュラー不変性を明らかにするため, 閉じた弦のノーループ真空振幅のモジュラー変換性を詳細に検討した. この研究において弦のゼロモードの振る舞いを明らかにすることが不可欠である. それは理論のグローバルな構造, 特にバックグラウンド場の影響を強く受けるのであるが, その解明において経路積分の方法は大変有力である. 結論として, バックグラウンド場がオービフォルド上に矛盾なくのっている場合には, その上の弦理論はモジュラー不変な真空振幅を与えることが明らかとなった. この結果は非可換オービフォルドによる模型構築に大きく道を開くものであり, 今後の現象論的分野での研究の進展が期待される.
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