研究概要 |
3d遷移金属化合物, とりわけVIb族(O, S, Se, Te)の元素と遷移元素から作られる金属間化合物の電子構造の研究が最近活発に行われている. Fe, Co, Ni等の3d遷移金属AとカルコゲンX(=S, Se, Te)とのAX型化合物はNiAs型構造をとる. この構造では各A原子は歪んだ八面体の頂点にある6個の隣接X原子により配位されているが, X原子の6個の隣接原子は三角柱の頂点に存在する. この三角柱配位はカルコゲンのd準位がそのp準位と混じってp^3d^3の混成軌道(三方柱的)を作り, 遷移金属の八面体的軌道d^2sp^3と重なっていると考えられる. そこで本研究ではFeS, CoS, CoSe, NiS, NiSeのFe, Co, NiK吸収スペクトル(伝導帯のp状態を反映する)を精密測定した. 同時に金属Fe, Co, Niとその酸化物CoD, NiO(Nacl型)のFe, Co, NiK吸収スペクトルも測定し, NiAs型化合物のスペクトルと比較した. 得られた結果は次の通りである. 1.CoOとCoSのスペクトルの形状は似ている. 同様のことがNiOとNiSのスペクトルの間に見られる. 2.CoSeはCoS(又はCoD)と異なったスペクトル形状を示し, 金属Coのスペクトルと似ている. 同様のことがNiの場合に見られる. 3.金属FeとFeSのスペクトルは互いに似ている. 以上のことからFeS, CoSe, NiSeのフェルミー準位の上の電子状態は金属のFe, Co, Niのそれと似ており, 上記化合物のスペクトルはVIb族元素の電気陰性度に強く影響されることが分った. FeS, CoS, NiSのSK吸収スペクトルは結晶ポテンシャルを用いた多重散乱法で計算し, 実験結果とよい一致を得た. Nb_2O_5とNH_UNbF_6のL_<II>, _<III>吸収スペクトルは3つの吸収構造から成り, これ等の構造はNb_2O_5の方がNH_UNbF_Lのものより広い.
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