研究概要 |
本研究は、昭和58-60年度の文部省科学研究費補助金による「固体の凝集エネルギーの理論的計算」に引続き、それを更に発展させたもので、遷移金属だけでなく稀土類金属を含むより広い化合物において「個々の固体の結晶構造の安定性について、またその磁気的性質について、どの程度理論的に(非経験的に)予測可能か」を調べ、個々の固体の物性をその電子レベルからより深く理解するとともに、いわゆる「物資設計」なるものがどの程度現在可能か」を調べようとしたものである。得られた結果の主なものは以下の通りである。 1.遷移金属間ラーベス相化合物1AB_2〔A=Y_2Zr,Nb;B=Mn,Fe_2Co,Ni〕の電子構造を、局所電子密度近似の枠内で、LMTO法により系統的に計算し、その全エネルギーの比較から、その結晶構造の安定性、強磁性反強磁性の出現を調べ、種々の実験事実が非経験的に説明できることを明らかにした。TiFe_2、Ti_<1-x>ScxFe_2のFeラーベス相化合物に見られる複雑な磁気相図、YMn_2の反強磁性転移に見られる大きな磁気体積効についても、その電子構造から自然に説明できることを示した。 2.最近注目を浴びている強磁性新物質Nd_2Fe_<14>B(ネオマックス)の電子構造を明らかにするためにR_2Fe_<14>B(R=Y,Ce,Gd,Nd)の電子状態をLSD近似の枠内で、LMTO-ASA法によって、その状態密度曲線、6種類のFeイオンの磁気モーメント、磁化の大きさ(30 ^μ_β /FU)を計算し、実験とよく一致することを示した。またRFe_2、RFe_5、RFe┣D217、CR=Y,Ce,Gd)の電子状態も系統的に計算した。 3.LMTO-ASA法を用いて、NiSi_2/SiおよびCoSi_2/Sこの金属は半導体界面の電子構造の計算を行い、空孔をうまく使えば充分良い結果を得られることを示した。
|