研究概要 |
本研究は超伝動材料の実用化への1つの方法である薄膜化に関する知見を得ること, および作製された薄膜の構造と物性との相関を明らかにすることを目的としている. 薄膜の作製には扱う材料に応じて異なった装置を使用した. 薄膜の構造は電子顕微鏡観察によって調べた. 以下に結果を報告する. 1.臨界温度の低いTaC,NbCは高融点炭化物としても知られているが, 電子ビーム蒸着法により比較的低い基板温度でエピタキシャル成長した薄膜を得ることができた. すなわち, 基板材料としてMgOを用いた場合, 基板温度が低いと薄膜は非晶質構造であるが, 温度を上げていくとまず微結晶が生成し, さらに温度を上げると結晶が次第に大きくなり, 基板温度420゜C前後でエピタキシャル膜が得られた. 2.臨界温度の高いA15型結晶構造をもつNb_3Geに微量のSiを混入した薄膜の作製を試みた. 高周波スパッタリング装置を用いた場合, 基板としてガラスあるいは溶融石英を使い, 温度を850゜Cにすると微結晶からなる薄膜が得られたが方位はそろっていない. また基板温度がこれより低かったり結晶性基板を用いた場合はA15型の結晶は得られなかった. イオンビーム蒸着法を用いた場合は, 基板がMgO, 温度が560゜Cのときエピタキシャル膜が得られたが, 大きな単結晶には成長しなかった. 3.最近発見された液体窒素温度を越える臨界温度をもったYBa_2Cu_3Ox超伝導材料の薄膜化を試みた. 物質が酸化物セラミックスであり, 薄膜作製条件の厳密な制御を必要とするので現時点で十分な成果は得られていない. 4.各方法で作製された薄膜の臨界温度を測定するため, クライオミニを用いて抵抗の測定を試みているが, 薄膜が機械的に弱く破損しやすいので導線との接着が困難であり現在検討を重ねている. 今後は物性測定にも力を入れたい.
|