研究概要 |
APW法に基づくMxTiS_2の電子帯構造と原子間結合に関する研究及びMxNbS_2におけるRKKY相互作用の研究を行ない以下に述べる結果を得た. 1.MxTiS_2(M=遷移金属)の非磁性状態における電子帯構造と結合様式 (1)侵入原子のMの3d状態は母体であるTiS_2のp-dγ反結合バンドとdε非結合バンドの間に新しいバンドを形成し, フェルミレベルはこのバンドに位置する. この新しいバンドにはSの3p状態とTiの3d状態もかなり混成しており, バンド巾もFe_<1/3>TiS_2で約3eVとかなり広い. (2)Mのdγ軌道とSのp軌道も共有性結合を示し, またTiとMのc軸方向にのびたdε軌道は互に混成して結合及び反結合状態を形成する. 以上の結果TiS_2の電子帯構造を用いたRigid-Band Modelが不適当であること及びM-3d状態を遍歴電子として取扱うべきであることを示す. 2.Fe_<1/3>TiS_2及びFeTiS_2の強磁性状態における電子帯構造 Feの3d成分は上向きと下向きスピンのバンドが大きな分裂を示し, その分裂は非磁性状態バンドのrigidな分裂としては表わせない. モーメントの大きさは単位胞あたり, Fe_<1/3>TiS_2で2.55μB, FeTiS_2で3.22μBである. この結果もM-3d電子の遍歴性を示している. 3.MxNbS_2におけるRKKY相互作用: 2H-NbS_2の層間化合物MxNbS_2では, M-3d局在していてRigid-Band Modelが成立ちRKKY相互作用が重要であると考えられている. そこでNbS_2の現実的な電子帯構造を用いてRKKY相互作用を評価した. その結果, 長距離にわたって振動し方向にも強く依存する交換相互作用が得られた. ただし, Mの濃度及び価数の違いによる多様な磁気構造をすべて説明することは不可能で他の相互作用を合せて考えるかあるいはRigid-Band Modelそのものを改良する必要があると思われる.
|