研究概要 |
強誘電性物質の不整合-整合相転位はその動力学が最近興味をもたれている. A_2BX_4型物質では, 微視的サイズの分域を隔てているディスコメンシュレーションがある活性化エネルギーを得て6個を単位として生成・消滅していき, その時間依存性は理論的には対数関数的であるとされている. 我々は, 不純物や格子欠陥によるピン止めのためその時間変化が極めて緩慢になっていると考えられているK_2ZnCl_4について, ディスコメンシュレーションの密度とその易動度に依存する誘電率の測定及び, 平均密度と分散を反映するX線衛星反射の観測を行った. その結果, 整合相から不整合相に(あるいは逆に, 又は不整合相内において)結晶の温度をジャンプさせた後の変化は, 比較的短い時間には通常の指数関数的に, 長時間的には理論の予想と合う対数関数的緩和になっていることを見出した. 次に我々はディスコメンシュレーションの生成・消滅の動的過程を直接観測することを目的として高分解能電子顕微鏡写真を撮影し, 3倍周期の整合相の格子像とその格子不整(ディスコメンシュレーションの端点の構造と関連していると考えられる)を観察し, 引き続き実験を進めている. また, ディスコメンシュレーションの構造を調べるため, チオ尿素, 硫酸リチウムルビジウム・およびテトラメチルアンモニウム塩の高次整合相のX線結晶構造解析を行った. このうちチオ尿素の9倍相で特に明瞭にディスコメンシュレーションの領域が識別出来た. それは微視的サイズの強誘電的領域を隔てる分域壁に相当しており, その幅は結晶の基本周期の1〜2倍程度と狭く, 局所的構造は常誘電相のものとなっている. その他, 関連する物質のX線的研究等により, 不整合-整合転移に関する研究を行っている.
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