研究概要 |
本研究の最終的な目的は, 高濃度近藤合金の遠赤外領域における光吸収とその温度依存性を測定し, それから, 近藤状態, 伝導電子の近藤状態あるいは重い電子系に関連した動的な性質を解明することである. 本研究を遂行するためには, 遠赤外領域における光吸収率を測定して光学定数を評価すること, また, その温度依存性を見出す必要がある. 伝導電子の遠赤外領域における光吸収に, 近藤効果がどのような形で現れるかは未だ知られていない事柄であり, その解明は本研究の目的の1つである. 本研究の大部分は, これらの技術開発, 予備的研究に〓やされた. 液体He温度における光吸収率の測定は, 力にリメトリック法を採用した. 光吸収率を精度よく測定するためには, クライオスタット内の真空を十分低く保つように留意すべきである. 光吸収率の温度依存性を測定するために, 参照キャビティ法によって反射率の相対値を測定する方法を採用した. 反射率の測定精度を改善するために, キャビティの形状について改良する余地がある. 伝導電子の遠赤外領域における近藤効果の影響を見るために, 希薄近藤合金AuVの遠赤外光吸収スペクトルを解析した. KK交換によって反射率スペクトルから光学定数を評価した. これと, 直流電気伝導度と単純なドルーデ理論から導かれる光吸収スペクトルとを比較した. この結果, 近藤状態に対応する新たな吸収帯の出現よりもむしろ緩和時間の周波数依存性の形になっていることがわかった. かつ緩和時間の周波数依存性は共鳴散乱のモデルによってよく説明することができる. 共鳴エネルギーが近藤温度よりかなり小さな値となっていることは注目すべき事実である.
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