研究概要 |
電子状態が格子の構造に与える影響を調べるのが本研究の目的である. 研究を遂行するにあたっては, 幾つかの異なったアプローチを試みた. 1.遷移金属を含む置換型不規則合金にしばしば見られるマルテンサイト変態の起源を微視的に探るために, KKR-CPA法を用いた精密な電子状態の計算を行い, (1)変形に対する応答を調べることによってFePd系でfccfctの格子不安定が期待される事を明らかにした. (2)3d遷移金属合金の電子状態を計算し, いわゆるスレータ・ポーリング曲線を第一原理に基づいた計算によって再現することができた. (3)これらの合金の格子定数を全エネルギー最小の条件によって決め, 凝集機構に対する, 化学的, 磁気的な寄与を解析した. 2.γMnの多重スピン密度波状態の電子構造をタイト・バインディング模型を用いて計算し, 多重スピン密度波と電子数の関係を議論した. また正方対称に歪んだ場合についても調べ, MnFe合金の多重スピン密度波状態の濃度依存性を説明した. また計算を複雑化せずに第一原理に基づいた計算を行う為に, LMTO法によるバンド計算プログラムを開発した. テストを兼ねて全エネルギーの計算から反強磁性γMnの格子定数を決める計算を行い, 現在, 多重スピン密度波状態の計算と正方対称相での計算が進行中である. 3.現象論的なアプローチとして, ランダウの現象論に基づき, 考えられる磁気構造に対して可態な格子変形を議論し, 濃度と温度で張られる平面内での反強磁性構造と格子変形に関する可能な相図を考察した. 3個の独立なスピン密度波に対応する副格子磁化と格子歪との結合を考慮する事により, γMn合金に現れる相図を統一的に説明した. 又, CsCl型AuMn合金で実験的に知られている2つの正方対称相が現れること, 斜方対称相が現れる可能性があることなどを指摘した.
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