研究概要 |
我々は高密度近藤状態の中で, 磁気的秩序を示す典型としてCeSb,CeBi;非磁性・非超伝導物質で重い電子系であるCeCu_6;超伝導を示し価数揺動状態にあるCeRu_3Si_2を選び, 高圧力で4f電子と伝導電子の混成が大きくなったときどのような振舞を示すかを, 電気伝導とX線回折から研究を進めてきた. 研究の進行過程において, 高温酸化物超伝導体が発現され, 我々は価数揺動との関連を調べる上で重要と考え, 高圧下での実験を行った. CeSbとCeBiは反強磁性体であり, 各々16.4Kと24.7Kにネール点を持ち, ネール点は圧力とともに各々1.01, 0.43K/kbar割合で上昇する. CeCu_6は常圧下では20mkまで磁気秩序も超伝導も現われないが, 低温で重い電子の振舞をする. 我々の4.2K以上, 30kbarまでの静水圧下または, 1.2K以上, 120kbarまでの準静水圧下の実験では, 磁気秩序も超伝導も誘起されないことがわかった. その代り, 重い電子系を特徴づける近藤温度が圧力で大きく上昇し, コヒーレンス領域に相当する電気抵抗のT^2依存を示す温度領域が増大する. 低圧領域では, このT^2依存から導かれる特性温度と電気抵抗のピークを示す温度が比例する. 磁気抵抗の負から正へ変わる温度も圧力で上昇する. また常圧で超伝導を示すCeRu_3Si_2は, 圧力で超伝導温度が上昇し, 30kbarぐらいで異常を示し, 30kbar以上ではLa系のよう振舞を示す. これらのCe系の圧力下の挙動は, 圧力によって4f-伝導電子間の混成が大きくなり, RKKY相互作用に比べて近藤温度が大きくなり磁気秩序が押さえられる. さらにf電子の実効モーメントが小さくなり, ペアブレーカーとしての働きが押えられ, 超伝導転移温度が上昇する. 超伝導体に対する圧力効果は, 高温酸化物超伝導体と類似性があり, 価数揺動状態が高い超伝導温度を得るのにどのように働くか今後の問題として残されている.
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