研究概要 |
本研究はリチウムシリサイド(Li_<12>Si_7)の結晶成長と電気伝導特性について実験的に検討を加えた. 原材料をタンタルるつぼに挿入し, これをバイレックス管中に真空封入して結晶成長を行った. 結晶育成の最適条件は700°Cで2時間保持し, さらに648°Cで6時間保持することにより良質の多結晶が育成できた. X線解析により, Schneringら〔Z.Metallkd.71,357(1980)〕が報告している. Li_<12>Si_7の回折パターンと類似した斜方晶系(a=8.569, b=19.704, c=14.318(〓))の回折パターンを観測した. 組成比のわずかなずれで1/50(〓)程度の格子定数の変化がみられた. 77〜600Kにおける抵抗率測定は, Keithley220型定電流源(61年度購入)を用いて行った. タングステンプローブと試料間にインジウムをはさむことによりオーミック電極を形成した. Schneringらの報告値(バンドギャップ0.6eV;10^6Ωcm(室温))とは大きく異なり, 10^<-4>Ωcmのオーダーの比抵抗値を申請者は観測した. 観測した抵抗値から育成した試料は化学量論比からのわずかなズレから生じた『縮退した半導体』か『半金属』であることが示唆される. ホットブローブ法により多数キャリアはホール(正孔)であることがわかったがホール起電力が非常に小さく, ホール係数を正確に測定することは出来なかった. 抵抗率の温度依存性は金属的性質を示した. しかし, 230K付近でLiAlやLiCaで観測されているリチウム原子空孔の規則-不規則配置に起因すると推定される抵抗異常が観測された. また, 500K以上では抵抗率が不可逆的増加を示し, リチウム原子の外部拡散に伴うリチウム原子空孔の生成を示唆している. さらにキセノンランプ光照射によりDember効果に起因すると考えられる光起電力が観測された. これは試料表面付近で生成された電子一ホールの拡散係数の違いによると考えられ, 本研究で育成したリチウムシリサイド(Li_<12>Si_7は縮退した半導体であると考えられる
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