偏光メスバウア分光により、物質中のスピン配向の知見を一層明確に得ることが可能となるので、その手法の新らしい開発を行った。 偏光メスバウア分光に不可欠の偏光ガンマ線源は、磁場掃引法により得られることはすでに報告者が実行発表したが、それの応用としてさらに有効なフィルター法を目的とした。フィルター法ではガンマ線源を磁場中でゼーマン分裂させ、それをさらに振動させることが分光測定にきわめて有利である。そこでそうした駆動機構として、従来の電磁コイル駆動法にかわり、報告者の発案によるピエゾ圧電アクチュエータによる駆動装置を試作し実験した。この駆動法は強磁場低温下で使用可能である点に大きな利点がある。駆動部分は、二枚のバイモルフ型圧電アクチュエータの中間にメスバウア線源を固定し振動させるもので小型であり、超電導マグネット間に組み込み可能である。この方式は従来のパイル型ピエゾ圧電素子では不可能であった大きなドップラー速度(数10mm/s)を発生させることが出来、又、分解能についても【^(57)Fe】メスバウア分光において0.30mm/sを達成した。低温冷却時の装置特性をみる為に、液体窒素温度に冷却し、ヘルベー転位点以下のマグネタイトの分光を行い、この温度領域においても加振可能で、分光に充分耐えうることを検証した。今後この駆動法は、液体ヘリウム温度、超電導マグネットの磁場下での加振に期待が持たれる。 フィルター法に使用するメスバウア線源としては、主にPd【^(57)Co】を用い、外磁場によりそのゼーマン分裂位置を変え(又は偏光を変え)ることにより、Fe金属フィルターとの間で特定の分裂線のみを共鳴吸収させた。同様の利用が期待出来、ゼーマン分裂位置を大きくとれる常磁性体線源てして【^(57)Co】in【Rh_2】(【Z_(n1-x)】【Co_x】)【O_4】を試作中である。
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