研究概要 |
希土類イオンの最外殻電子である4f電子は局在性が強く結晶内でもイオンに良く局在していて, あまり結晶の凝集に関与していない. したがって, 電子行使相互作用は小さく, ヤーン・テラー効果による軌道整列でなく, 交換相互作用による軌道整列が起きる可能性が高い. 1983年, 近藤格子系のCeB_6の異常磁性は, 基底f多重項が4重項A6A3_8とし, 軌道整列が実現しているとの立場でほぼ理解できる事を指摘した. 即ち, 分子場近似より粗い近似で, [1]観測されているCeB_6の相図は高温から温度を下げていくと, まず常磁性状態(状態I)から反強磁性的軌道整列状態(状態II)へ転移する. さらに温度を下げていくと反強磁性的軌道整列と通常のスピン反強磁性の共存状態(状態III)へ転移する. [2]状態IIでは, 磁場が引加されないときは反強磁性モーメントは存在しない. しかし磁場が引加されると強磁性モーメントばかりでなく反強磁性モーメントも出現する. [3]状態IIで磁場を引加していったとき, 飽和磁気モーメントの値はA6A3_3の自由度のうち半分は軌道整列として使われているため, A6A3_3の全モーメントの長さより数10%小さいCeあたり1μ_Bであり, 実験事実を説明すると指摘した. 本研究では電子計算機利用による分子場近似による計算を実行し, 何等かの異方性エネルギーを仮定すれば, 報告者が既に発表している上記結論は定性的に正しい事を確認した. 事を指摘した. また, 磁気モーメントの大きさが実験値より約20%大きく計算されてしまった. これは近藤効果と交換相互作用の競合効果としての磁気モーメントの縮小効果として説明できる事を示した. この効果は, またCeNi_xPt_<1-x>系で成分比xを変えると強磁性-常磁性転移をするが, xの関数として磁気モーメントの現れ方も説明できる. この競合問題はさらに発展して, 希土類銅酸化物系の高温超伝導の問題に応用し, 6編の論文を発表した.
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