研究概要 |
1.クラスター転送行列の展開: (1)スピン鎖の熱力学的性質への量子効果を鈴木-トロッター公式によりt=kBT/21JIS2【less than or similar】1の低温まで計算可能な方法を展開することを目的とした. (2)交換相互作用(最近接とする)によるスピンの間に相関はtの低下とともに延びる故, 相関距離程度の大きさのスピンクラスターを基に上記公式の適用を提案した. (3)スピンS=1/2のXY模型, 等方ハイゼンベルグ模型に対し最大4スピンクラスター, トロッター数M=6まで調べた. (4)当研究の着想の顕著な効果をXY模型の場合解析的に示した. (5)強磁性鎖の場合M=6, 4スピンクラスターでt【greater than or similar】1の領域で比熱, 帯磁率を十分な精度で数値計算出来た. (6)反強磁性鎖の場合M=6, 4スピンクラスターでは内部エネルギー, 磁化は良いが, 比熱と帯磁率は十分な精度で計算出来なかった. (7)これらの結果は基底状態のスピン構造およびスピンクラスターのエネルギー準率構造から理解できることを示した. (8)磁場の印加はスピンのゆらぎを抑制する故, 小さいスピンクラスターでも精度は良くなる. (9)高橋他の最新のスピン波理論との比較を行なった. 2.スピン系における量子トンネル効果による単位分裂を非調和効果から分離して計算する方法を提案した. 教科書的問題であり, 多くの論文があるが, 従来の方法は古典極限を取り, 量子補正として計算するものであった. 本提案は全く一般的方法である. この準位分裂の大きさが量子トンネリングによるコヒーレンスの特性振動数を与える. 3.我国におけるソリトン物理学の研究成果をまとめて発表することになり, ソリトン系の統計力学に関して国際的視野で総合報告をした. 本報告者のグループはソリトン系の統計力学全般にわたって第一級の成果を遂げて来たので, この総合報告の中核をなす. この分野の理論面の現況を初心者にも理解出来るよう入門的記述も十分に行なった.
|