研究概要 |
超微粒子やグラファイトインターカレション化合物等の低次元物質の創製は, それらのサイズや次元性に基づいた新しい物理的性質発現の期待から関心が持たれている. その場合, 粒径等が非常にシャープに分布していることが重要である. この点で直径10A前後のチャンネルやキャビテイを結晶内部に高密度, かつ周期的に有するゼオライト(M_<X/m>Si_<1-X>Al_XO_2・nH_2O)は, これら低次元物質やメタルクラスターの容器として極めて興味ある. これまでに, 多種類のゼオライトが合成され, チャンネルやキャビテイの大きさ, それら互いの連結様式等を実験目的に応じて選択することが出来る. 本研究はゼオライトの作る制限された空間の中に新規な低次元原子鎖あるいはクラスターの作製を試み, それらの結晶額的同定を目的とした. セレンは統合に際し二配位で比較的定まった結合長, 結合角, 二面角をとり, それが入る空隙の幾何学により鎖状或はクラスター状になることが期待される. そこで一次元チャンネルを持ち口径6.7_X7.0Aのモルデナイト(MOR, 空間群Cmcm)及び口径7.1AのゼオライトL(LTL, 空間群P6/mmm)及び直径約14Aのキャビテイを持つゼオライトY(FAU, 空間群 Fd3m)を選び, それらを徐々に加熱して脱水処理を施した後, 気相からセレンの挿入を試みた. ゼオライト粉末はこの処理により白色からオレンジ色に変化した. 電子顕微鏡観察は1000kV電子顕微鏡(Cs=11mm)を用いて行った. 電子回析図形, 高分解能電子顕微鏡像及び像計算とから, MORやLTLの場合主チャンネル中にのみ, 且つ各々一本および二本以上のセシン原子鎖が, FAUの場合キャビディ中にクラスターを作ることを直接確認した. 以上の結論は, これらゼオライト中のセレンの乱反射スペクトルの我々が得た実験結果からも妥当であると考えられる.
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