研究概要 |
[±]オーストラリア・モンスーンの年々変動を季節内変動(30-60日周期振動との関連でとらえることを目的として, 1980-1984年の期間について, 南半球夏季の風の変動を調べた. 用いたデータは, ヨーロッパ中期予報センターで作られた格子点データで, 下層850mb面と上層20omb面の風の東西成分を, 村上によるディジタル・フィルターで, 周期で130日以上, 30-60日, 15日以下の3成分に分けてそれぞれの強度の変化を調べた. 南緯10°を中心とした領域で次の事が見出された. 1)850mb面で西風が早越しているときに, 東西成分の30-60日周期の振動の振幅が大きくなる. 2)西風の早越する領域は, およそ40°E-180°Eであるが, 年々による変動が大きい. すなわち, 1980/81年の12〜2月は, 100°E-160°W, 1981/82年の同時期には, 100°E-180°Eと40°E-80°Eの2個所, 1982/83年のエルニーニョの時期には, 120°E-140°Wと40°E-80°Eで東側の南西域は東太平洋に及び, 1983/84年の反エルニーニョの時期には, 40°E-160°Eと西太平洋西部に閉じこめられていた. [II]オーストラリア・モンスーンには, 同季節の北半球の冬季モンスーンによる寒気の低緯度域への溢れ出しが関係していることが, これまでの研究で示唆されて来た. そこで, 北半球の寒気の吹き出しが低緯度に及ぶメカニズムをさぐるため, チベット高原に沿う寒気の動きをデータ解析により調べた. その結果, 大陸上の寒気の吹き出し(コールド・サージ)には, 中国大陸全体にわたる大規模のものと, チベット高原の山腹沿いに局限されたケルビン波タイプのものの2種があること, 後者の方が動きが遠く, 大規模サージに先行することが明らかになった.
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