研究概要 |
太陽風とハレー彗星起源プラズマとの相互作用を彗星からのプラズマ生成過程を含めたグローバルな3次元電磁流体力学的(MHD)シミュレーションから調べた. その結果, 最近ハレー彗星国際協同観測から得られたいくつかの観測結果の特徴を自己矛盾の無いモデルから良く再現することができた. 太陽風と彗星プラズマ相互作用の結果, 弱い無衝突衝撃波が彗星の前面32万Kmに形成され, その弱い衝撃波を通過する時惑星間磁場(IMF)は3.7倍増大する. 更に太陽風と彗星プラズマの接触面に近づくにつれて増大を続け, IMFの6〜8倍に達する. プラズマ温度もその衝撃波面を横切る時高くなるが, 更に彗星に近づく時, 彗星起源の冷いプラズマと混合して低くなる. 惑星間磁力線は彗星プラズマに掛かり, その磁器圧により長く後方に伸びた冷たくて高密度の彗星プラズマ尾を形成する. 彗星プラズマに掛かった磁気線はローブを形成し, そのローブの磁場はIMFの5倍程度まで強められる. 冷たくて高密度の彗星プラズマ尾はローブ磁場に圧縮されて平たくなり, 上流のIMFの方向に薄くなる. 太陽風の動圧の増加やIMFの値と方向の変化に伴い, 彗星プラズマ尾に光線構造やプラズマ圧力の増大した小塊が形成され, 尾方向に局所的なアルフベン速度で伝搬するのがみられた. これらのシミュレーション結果は多くの連続写真観測から示された彗星尾のダイナミックスに対して, 一つの説明を与えることになった. 私達の3次元MHDシミュレーションの結果は, 彗星質量生成機構と呼ばれる彗星から供給されるプラズマ生成の役割を明らかにしたのと同時に, 太陽風と他の惑星電磁圏相互作用との違いを調べる上で一つの重要なきっかけを与えたと言える.
|