研究概要 |
混合原子価現象を示す鉄及びマンガンの3核錯体4種類について、13〜300K温度領域で精密な熱容量測定を行った。化含物は[【Fe_3】O【(O_2CCH_3)_6】【(py)_3】](py),[【Fe_3】O【(O_2CCH_3)_6】【(3-Me-py)_3】](3-Me-py),[【Fe_3】O【(O_2CCH_3)_6】【(3-Me-py)_3】](toluene)及び[【Nn_3】0【(O_2CCH_3)_6】【(py)_3】](py)である。また、2核有機金属化合物である[【〔Fe(C_5H_5)(C_5H_4)〕_2】【I_3】についても熱害量測定を13〜360K領域で行った。いずれも分子内電子遷移に基づく相転移現象が観測された。一方、これらの相転移が起るためには、結晶中に取り込まれた、溶媒和分子の分子運動とも強くカップルする必要があることを明確に示すことができた。混合原子価現象は、最近注目を集めている極めて興味深い現象であるが、従来は主として各種分光法による研究が多く、本研究による熱力学的知見、特に熱容量とエントロピーによる解釈は、斯界の注目を集める結果となっている。 他方、スピン量子数が温度変化により変換するスピンクロスオーバー現象については、3価の鉄錯体3種について、熱容量測定を行った。化合物は、[Fe【(3_OEt_SalAPA)_2】](【ClO_4】)(【C_6】【H_6】),[Fe【(3_OEt_SalAPA)_2】](Cl【O_4】)(【C_6】【H_5】Cl)及び[Fe【(3_OMe_SalEen)_2】](【PF_6】)である。これらはいずれも、スピンクロスオーバーに基づく相転移が観測された。スピンクロスオーバーの研究は、従来は主として2価の鉄について行われており、本研究で取り上げた3価の鉄錯体については、極めてめずらしい熱測定の例となっている。赤外線吸収スペクトルの温度変化と組み合わせることにより、相転移に伴う大きなエントロピー変化を、スピン多重度の変化と、配位距離の変化による寄与として、正確に評価することができた。
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