研究概要 |
1.新しい高電導性電荷移動錯体の開発を目的として、既に"ペリ縮環Weitz型ドナー"と総称できる新しいドナーの開発を行った(例えば16-ジチアピレン(DTPY,1)。本研究では固体状態の物性にとって重要な分子間相互作用即ちカラム間相互作用を積極的に導入することを目的として、化合物(1)に四個の硫黄原子を導入したETDTPY,(2)の合成を行い、種々の電荷移動錯体を合成し、その諸物性を検討した。 2.基本的には下に示した合成ルートで目的とする(2)を合成した。先ずナフタレンジテオール(3)とクロロ酢酸よりジカルボン酸(4)を得、これを常法通り縮環してジケトン(5)とした。ジケトン(5)をエタンジテオールによりケタール(6)としこれをN-クロロスクシンイミドで処理することによりETDTPY(2)を得ることに成功した。(2)のCV法により求めた酸化電位は0.48,0.83Vであり良好なドナー性を示した。この新しいドナーと種々のアクセプターとの電荷移動錯体を合成した。代表的なアクセプターとしてはDDQ,TCNQ,DBBTCNQ,ヨウ素などを用いた。得られた錯体の電荷移動量,CT遷移エネルギー,電導度等種々の物性を測定した。これらの中でヨウ素錯体が室温での電導度が42S【cm^(-1)】と高い値を示し、活性化エネルギーが0.04と非常に小さな値であったことが注目に値する。即ちテトラテアフルバレン骨格を持たない数少い高電導体であり今後の研究の発展が期待されている。
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