研究概要 |
トロポロン核への炭素側鎮の導入反応はいくつか開発されているが、フェニル側鎮の導入は容易でない。この二、三年トロポロン核へのフェニル側鎮の導入法について検討し、ベンゼン環のオルトあるいはメタ位に置換基をもつ2-(2-アリールヒドラジノ)トロポン類は酸によるいわゆるベンジジン転位型反応をうけ、アリール基がトロポロン核の5位へ容易に転位することを見出した。 そこで、本年度はベンゼン環のパラ位に置換基をもつ2-[2-(4-メチルフェニル)ヒドラジノコトロポン(【1!〜】)をエタノール中塩酸存在下還流加熱すると、5-(2-アミノ-5-メチルフェニル)トロポロン(【2!〜】)と2-メチルインドロ[2,3-b]トロポン(【3!〜】)のほか、(4-メチルアニリノ)-2-アミノトロポン(【4!〜】)と(4-メチルアニリノ)トロポロン(【5!〜】)を生成した。化合物(【2!〜】)は(【1!〜】)の3,5-転位と加水分解によって生じたものであり、化合物(【3!〜】)は【1!〜】の3,3-転位によって3-(2-アミノ-5-メチルアニリノ)-2-アミノトロポンを生成したのち分子内求核反応によって環化したものと考えられる。これらはいずれもパラ置換ヒドラゾベンゼンの酸転位によるジフェニリンおよびO-ベンジジンの生成に類似している。さらに、化合物(【4!〜】)と(【5!〜】)はセミジンに相当するものである。 今後は、化合物(【4!〜】)および(【5!〜】)におけるアニリノ基の位置を決めるとともに、転位に対するパラ置換基の効果ならびに反応機構について検討する予定である。
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