研究概要 |
本研究の代表者は、東北日本弧の第四紀火山岩の【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比が、大部分の地域では0.7035-0.7045であるが、北関東地方に限り、0.705-0.709と高いことを見つけた。関東地方の地下では、東から西へ没み込む太平洋プレートの上方に、フィリピン海プレートが北西方向へ没み込む、二重の没み込み構造が見られ、高い【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比は、フィリピン海プレートが運んだ高い【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比をもつ海洋堆積物が初生マグマに混入したと考えられることを示した。このモデルに従えば、フィリピン海プレートが北関東の下へ没み込む以前の火山岩中には高い【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比成分は含まれないはずであり、年代と場所の異なる北関東の火山岩の【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比を調べることにより、フィリピン海プレートの沈み込みの様子を知ることができる。本研究では、北関東地域の第四紀火山である赤城,榛名,子持,小野子各火山の最も古い噴出物、およびその下位の基盤に相当する部分を構成する火山岩類を採取し、K-Ar年代と【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比とを測定した。その結果、2Maより古い火山岩類の【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比は、0.7039-0・7042であり、北関東地方を除く東北日本弧の火山岩類の値を示していた。また、1.2Maの火山岩は高い【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比であり、【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比の急激な増加が、1.2Ma-2.0Maの間におこったことが分った。この結果は、フィリピン海プレート由来物質の初生マグマへの供給が2Ma前にはなかったこと、すなわち、フィリピン海プレートの先端が2Ma前には現在の火山地域にまで達していなかったことを示している。この地域で第三紀火山岩類を採取することは大変に困難で、データ数が限られるため、【^(87)Sr】/【^(86)Sr】比増加年代の局所的な違いをとらえることはできなかった。
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