研究概要 |
熱量の直接測定を滴定形式で行なう時の最も重要で、難解な問題に液量変化に伴う熱容量変化の取扱いがある。しかも、滴定及び被滴定物質の種類,その溶液の濃度,体積,温度などによって異なり、一般化して取扱うことが難しい。本研究でねらいとした測定系内で滴定物質を発生させる方法では、この体積変化がないので、これに依存する熱容量変化分は問題にする必要はなくなった。ところが、熱交換熱量測定法では、電気的にジュール熱を発生させて装置定数を求める必要があり、しかも、上記の測定条件を全て含めたその時点での測定系において実測する方式をとっている。反応容器中の撹拌能力を考慮してこの電流値にあまり大きくしないことが望ましい。一方、滴定物質をクーロメトリーによって電解発生を行なう際の電解電流値はその発生速度によるが、その大きさは、問題にしている滴定反応のΔHと反応物質量すなわち測定熱量の大きさによって異なり、熱量測定の最適領域に合うように選定した。電解電流値が、ジュール熱を発生させる電流値とほぼ同程度か、それ以上になるときは、良い結果がえられなかった。滴定物質を発生させながら同時に反応熱を測定する方式は、測定容器(セル)が簡単であるという大きな利点はもってはいるが、反応熱がかなり大きい場合でない限り、かなりの誤差を含むことになり、分析化学を目的とするにはさらに検討が必要である。本研究で試みたマイクロコンピューターによるデータの取込みおよび取扱いと電気化学関連の測定には、特に問題はない。しかし滴定反応に一般性をもたせるには、反応容器に工夫を加えて、滴定物質を電解発生後、恒温水槽温度にしてから反応させ、これを少量ずつ繰り返しながら進行させて行くように改良するのが一案であり、本研究で明らかにできた問題点である。
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