研究概要 |
本研究を始めるにあたり、Sn【O_2】半導体をセンサーとする、水素連続測定器を試作した。今までの観測の経験から、断層地域では水素濃度の変化が大きい事を考慮し、本器では0〜10,0〜100,0〜1000ppmの3つの水素濃度範囲を同時に観測する仕様とした。また、水素連続測定器の出力信号を、ADコンバータを介してハンドヘルドコンピュータに取り込むデータ収録装置を組み立てた。システム完成後、センサーを濃度の異なる水素ガス中に置いて、出力電圧を測定し、水素濃度と電圧との関係をもとめた。その結果、水素濃度が3〜1000ppmの範囲では、水素濃度にほぼ比例して出力電圧が増加する特性が得られた。これから、本器は広い濃度範囲にわたって十分な精度で使用出来る事が判明した。これを1ヵ月間実験室にて試用した所、昼間の人間の出入りの多い時には室内の水素濃度が上がる傾向が見られるなど、空気中の極低濃度(0.5ppm程度)の水素のわずかな変動も検出できる事が実証された。野外における耐久性・信頼性の検討およびガスクロマトグラフ法との対比のため、8月に水素連続測定器を跡津川断層上の坂上地区に設置した。野外での場合、測定器およびデータ収録装置を大型密閉容器に収納し、自動車バッテリーを電源とした。この方法で測定器は順調に作動し、野外においても十分な信頼性が得られた。本器による観測の結果、断層上の土壌ガスの水素濃度は、通常0.3ppm以下であり、昼に高く夜に低くなる日変化をする事が判明した。10月の上旬から中旬にかけて0.8から0.5ppm程度の水素の異常な上昇が観測された。この期間には、ガスクロマトグラフ法による測定でも3ppm程度の水素濃度の上昇が観測され、両者の水素濃度の経時変化は良く一致した。数ケ月以上の長期にわたる観測でも、本器は十分な信頼性がある事が判明した。また、断層における水素の放生時には、水素濃度が1日の間にも大きく変化する事が認められた。
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