研究概要 |
ベンゾチアジアゾリンの誘導体である2N-(2-メルカプトフェニル)-1,2,3-ベンゾチアジアゾリン(以下MBTDと略す)をSandmeyer法により合成し、MASS,IR,UV,元素分析その他により同定した。このMBTDを用いて金属との反応性を試験した結果、可視部に吸収を示すのはパラジウムとオスミウムのみであり、オスミウムは呈色が弱いことからパラジウムの特異的定量試薬になることを知った。パラジウム-MBTD錯体はリン酸-n-トリブチル(TBP)により抽出されるが、その抽出挙動は興味ある結果が得られた。すなわち水相中でパラジウム錯体を生成させた場合5種の錯体が生成し、いずれも抽出性は低い、しかし界面で生成させた錯体はpHにより1〜2種の錯体となり、定量的に抽出される。この抽出パラメーターが調べられた。 またMBTDに2個のメチル基を導入した2N-(2-メルカプト-4-メチルフェニル)-6-メチル-1,2,3-ベンゾチアジアゾリン(以下Me-MBTDと略す)を合成し、これによる金属の抽出条件を検討した。その結果抽出挙動はMBTDと大きく異なり、水相中で生成した錯体も50%程度抽出され、界面で生成させたものはほぼ完全に(99.3%、相比=5)抽出された。抽出錯体は788nmに吸収ピークを示し、試薬の吸収ピークは233nmと360nmであるから著しいレッドシフトと言える。得られた錯体の分配定数(【K_D】)はlog 【K_D】=2.85(μ=0.05,25℃),抽出定数(Kex)はlog Kex=3.2,生成定数(Kf)はlog Kf=15.2であった。錯体の組成はパラジウム:Me-MBTD=【Cl^-】:TBP=1:1:1:2であった。モル吸光係数は3.1×【10^4】l【mol^(-1)】【cm^(-1)】(788nm)であり、本法はパラジウム合金に適用され、良好な結果が得られた。 今後の問題として、界面での反応機構、更に他の誘導体の金属との反応性等について検討されることが望まれる。
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